黒い砂漠ストーリーガイド - 一気に読む総まとめ
※ 本ストーリー記事はシリーズで連載されます。
※ メインクエスト、NPCの会話、知識などを参照して作成しました。
※ 分岐とは、ゲーム内でユーザーが何を選択するかによってエピソードが変わる部分を指します。
※ 若干の脚色が含まれていますが、ゲーム内の設定およびコンセプトには支障ありません。
■ オーディリタPart 2 - 不均衡な宝石
サラナル池、苦悩が眠る墓
不均衡な宝石、その二番目の材料 - 無念の杯
「ラフィーが……ラフィーが何も抵抗もできずに拉致されてしまった!」
近づいてくるオーウェンと冒険者を目にしたヤーズは、こう言って涙ぐんだ。突然とあるアヒブが現れてラフィーを見ると、「指名手配者を見つけた」と言い、連れ去ってしまったのだという。一方、そのアヒブには「カチーヌ」という人間奴隷が一人同行しており、ラフィーを「サラナル」に連れて行くという言葉を残していったらしい。
冒険者はヤーズの説明を聞くや否や急いでサラナル池へ馬を走らせ、オーウェンはエダンが戻ってき次第、合流することにした。
▲ ラフィー・レッドマウンテンが拉致されたことを知らせるヤーズ
サラナル池に到着した冒険者は、慌ててサラナルの小屋に飛び込んだ。幸いにもラフィー・レッドマウンテンはそこにいた。彼を取り巻くアヒブ兵士、そして「ギャンブラーのヘロン」と共に。
ヘロンは、以前深き夜の港でエリオンの司祭を拉致しようとして冒険者と出くわしたアヒブだった。そのときは、その司祭がアタラクシアと知り合いだったのだが、今回は冒険者と知り合いのラフィーを拉致したのだ。ここまでくると、もはやギャンブラーではなく拉致犯ではないか。
そのとき、闇の精霊が冒険者のわき腹をつついた。闇の精霊は、以前苦悩が眠る墓の書庫であるドワーフ奴隷が言ったことを冒険者に思い出させた。「それは語られるべきではなかった宝の知識…よくも…ラフィー・レッドマウンテン…」。ということは、ラフィーも、かつてオーディリタの奴隷だったということか?
▲ ギャンブラー・ヘロンに捕まりサラナルに連れ去られたラフィー・レッドマウンテン
冒険者はヘロンにラフィーを拉致した理由を聞いた。ヘロンによると、女王が「堕落者を意図的に増やす勢力はダークナイトではなかった」という声明を発表したのだという。そしてこの声明が発表されたきっかけがアタラクシアだったことを知り、オルン渓谷近くのダークナイトの隠れ家に向かう途中でラフィーを見つけたのだと話した。ラフィー・レッドマウンテンは、公開手配された野蛮人の中でも最も価値が高いため、逃がすわけにはいかなかったのだ。
ラフィー・レッドマウンテンは、隠された宝物の知識を世間に広めた罪もあるが、どんな小人よりも古代王国オルゼカの古代言語に詳しい人物だった。アヒブはこのようなドワーフを再び捕まえて母の知識を解釈し、堕落者の研究をさらに進める思惑だった。
「ラフィー、不均衡な宝石を作る二番目の材料、無念の杯を得るための知識について白状しなさい」
サラナルはラフィーに向かい、冷たくそう言い放った。恐怖に怯えたラフィーは、無念の杯、すなわち「転生の杯」と呼ばれるそれは、この地を最初に通ったハドゥムの蛇、イベドルと関連があると打ち明けた。
ラフィー・レッドマウンテンが白状した無念の杯の話
「この地はすでに絶望で埋め尽くされている」 影の蛇イベドルを絶望の神に捧げる生贄として連れて行くことができた者は、誰一人としていなかった。
望みの神、クザカが誕生する前、オルゼカではいばらの黒い女神に仕えていた。古代王国オルゼカの黄金期を率いたベルシュアンと、彼を支持していた魔女ヘッサ・モアはある日、皆を集めて公表した。
「昨夜、女神の神聖な深淵に根を張った神木クトゥランに捧げる純粋な供物たちが影の蛇に惑わされ、皆死んだ。その蛇は私たちも初めて見る存在であり、外の世界にオルゼカを狙う悪神が存在することを意味する。いばらの木の黒い女神の結界は影の蛇を防ぐことができず、女神の知識によって黄金期を迎えたこの地に蛇の跡が残った。いずれこの地は、この世界の向こう側の影に食われるだろう。影の蛇が残した跡を辿り、闇が押し寄せてくるはずだ。しかし、蛇は希望の歌声を聞いてこの地を訪れたため、この地を絶望で埋め尽くせば、蛇が再び私たちを狙うことはないだろう」
そして、ベルシュアンとヘッサ・モアは女神の権能を意味する無念の杯を取り出した。
「これは全ての魂の苦悩と記憶、そして感情を浄化して生まれ変わらせる転生の杯。まだこの地を離れていない影の蛇イベドルを捕えたなら、この女神の杯を授けよう」
しかし、その蛇は抜け殻だけを残して消え去った。その抜け殻を発見したのが「バヒット・ラ・ルコナ」だった。後日クザカ神殿を焼き払い、オルゼカの果てしない自滅を終結させた悔いる影だ。彼は蛇の抜け殻をどこかに埋めると、オルン族の力を借りて秘密地図を作った。その地図は、オルンの心臓から出てくる光がなければ解読できない地図だった。 |
「そうだったのか。地図を解明できるのがオルンの心臓だったとは…パズルのピースは手に入れた。お前たちと一緒に逃げた者のせいで、少し難航しただけだ」
サラナルは満足げに微笑んだ。ラフィー・レッドマウンテンも見つけることができなかった地図の行方。実は、地図を解読する方法が分からなかっただけで、アヒブはすでにその地図を手に入れていたのだ。
「冒険者はテラテナに会ってください。このドワーフは苦悩が眠る墓に送って」
冒険者はサラナルの言うことに素直に従うしかなかった。もちろんラフィーを助けたかったが、不均衡な宝石を作るために女王と約束したうえ、その場を厳重に守るアヒブ兵士全員を相手にすることはできそうになかった。仕方なく冒険者はうつむく不憫なラフィーに目をやりつつ、池へと降りていった。
▲ 地図を照らすカギは、冒険者が持ってきたオルンの心臓だった。ラフィーは再び奴隷となり、連行された。
池のほとりに座っていたテラテナは、この地図を探すのにどれほど苦労したかについて、楽しそうに武勇伝を語り始めた。この地図を見つけたのはドラゴンと人間の最後の大戦以後、誰も訪れないという果てしない冬の山だったこと。そしてバヒット・ラ・ルコナがクザカ神殿を燃やしたあと、神も焼き尽くすという神聖な炎、イニックスの根源を求めて果てしない冬の山に向かったことなど…。
特に彼女はその山の雪獣人たちが咲かせた翡翠色の炎が忘れられないと言った。その炎が去って行ったドラゴンを「帰ってこい」としきりに呼んでいるようだったという。
しかし、冒険者は彼女の話には興味がなかった。重要なのは、バヒットの秘密地図に冒険者が見つけたオルンの心臓を照らしてみることだった。ちょうど冒険者があくびを噛み殺したそのときだった。テラテナが武勇伝を話し終え地図を取り出すと、冒険者は素早くその地図にオルンの心臓を照らした。すると、何もなかった羊皮紙からくねくねと絵が現れ、無念の杯のある場所を指し示した。なんとそこは、驚くべきことに「苦悩が眠る墓」ではないか。
「なんと…ここは…?もっと遠く離れた場所に隠したと思っていたのに…」
苦悩が眠る墓は、ハドゥムの蛇が初めて現れた場所でもあった。バヒット・ラ・ルコナがよりによってこんな所にイベドルの抜け殻を隠した理由は何だったのだろうか。一方、イベドルの抜け殻はハドゥムのオーラを宿す物であり、太古からこの地をハドゥムのような外からの災いから守ってきた「藍色の炎」で、正体を突き止めることが必要だった。
▲ 武勇伝を語るテラテナ。果てしない冬の山はガーディアンに関わる地域でもある。
冒険者は地図の指し示す方向に沿って、苦悩が眠る墓へと向かった。冒険者は、その周辺の墓を掘り出して正体不明の箱などを見つけたが、そのほとんどは死んだネズミや壊れた足枷、骨のかけらなどだった。しかし、諦めずに掘り返していると、長い蛇の抜け殻を発見することができた。
興奮した冒険者はその抜け殻を持って、藍色の炎を守るユーラシスのもとへ向かった。さまざまな蛇の抜け殻があったが、中でも藍色の炎が激しく反応するものがあった。それこそまさに、イベドルの抜け殻だった。不思議なことにその抜け殻は、長い歳月が経っても全く腐敗することなく完全な姿を保っていた。
冒険者は、オルゼカが自滅することになった原因だというイベドルの抜け殻をじっと見つめた。何の変哲もない抜け殻のように見えるが、これが燦爛たる王国オルゼカをあれほどまでに恐れさせ、ハドゥムに立ち向かう新たな神クザカを誕生させ、ついには滅ぼした元凶であるとは…。にわかには信じ難かった。
▲ 冒険者は、藍色の炎が反応するイベドルの抜け殻を見つけた。
イベドルの抜け殻を見つけた冒険者は、ユーラシスの案内に従っていばらの書斎へ降りていった。そこで黒い瞳の説明を聞き、監獄に閉じこめられたラフィー・レッドマウンテンにも再会した。
黒い瞳は冒険者に無念の杯を手に入れるためには、書斎の下の無念の沼に入って最初の堕落者ラズナールを呼び出さなければならないと話した。ラズナールは、これまで誰も手にすることができなかった無念の杯を守る腹心だったからだ。しかし、これが全てではないと判断した冒険者は、ラフィー・レッドマウンテンからイベドルの出現に関する話をさらに聞くことにした。
無念の沼とイベドルの抜け殻
無念の杯といういばらの女神の権力まで掲げながら、影からオルゼカ王国を守ろうとしたベルシュアンと魔女ヘッサ・モアは、結局影の蛇を見つけることができず、魔女は王に囁いたという。いばらの女神の力が衰落し、これ以上この地を守ることができないため、女神の神木からこの地を守る新しい神を誕生させなければならないと。
その後、いばらの女神を完全に忘れ、クザカに仕えるようになった魔女は、クザカが噛み砕く生贄から滴り落ちる血で喉を潤し、どのオルゼカ人よりも濃い古代の闇の魔力を秘めるようになったという。しかし、魔女は後日バヒット・ラ・ルコナと彼の勢力に鎮圧され、彼女がクザカを誕生させるために押しやった生贄の墓、その下にある無念の沼の片隅の監獄で寂しく死を迎えた。
オルゼカの記録によると、バヒット・ラ・ルコナはイベドルの抜け殻を発見しただけであって、イベドルを探し出すことはできなかったため、誰も無念の杯を手に入れることができなかったのだという。結局無念の杯はその地位を守ってきた王の補佐役である魔女ヘッサ・モアが持ち出し、その後も長い間、支配者の最も優秀な補佐役が管理してきたという。
現在、アヒブのオーディリタは堕落した神クザカによって呪われ、堕落した神の邪念に従うアヒブの堕落者たちの地となっている。その中でも最も邪悪とされるのは、最初の堕落者であるラズナールだ。アヒブたちは、最初に汚染されたトゥラシルの力を吸収して堕落者となったラズナールがオルゼカ王国を他の闇から守らなければならなかった堕落した神の邪念に従い闇を代表するイベドルの抜け殻に反応し、その姿を現わすだろうと考えた。 |
ヘッサ・モアの企みと若い花を揺るがす蛇
クザカに捧げられた生贄は、痩せた地の力のないオルン族として知られているが、それ以前に神木クトゥラン、つまり黒い女神に捧げられた生贄は、実は名もなき幼い子どもたちだった。オルゼカ人たちは、子どもたちの泣き叫ぶ純粋な血が女神の豊かさを刺激すると信じていたからだ。子どもたちは無念の池で過ごしたが、祭司長を除いてその事実を知る者はいなかった。
ベルシュアンの魔女、ヘッサ・モアはこの秘密を隠すため、子どもたちの泣き声をなだめる一つの悪知恵を絞った。彼女はオルゼカを建てた天才建築家、カンティルニアを呼びよせ、彼が趣味で作った黄銅と青銅の兵士人形を子どもたちに与えた。すると人形をもらった子どもたちはたちまち泣き止み、魔女は子どもたちに人形を主人公にした歌を歌わせた。
しかし、ある存在がその歌声に耳をそばだてた。イベドルだった。記録によれば、その蛇はカーマスリブを連想させる乾いた白い樹皮の鱗を持っており、その気になれば、自由自在に姿を変えることができた。その蛇は子どもたちの歌に染み込んだ希望を嗅ぎつけて近づいてきたのだった。
「小さくて美しい妖精たちよ。兵隊の人形に名前をつけておくれ。そうすれば、兵隊は君たちと友だちになって、一緒に歌を歌ってくれるだろう。一緒に生い茂った森の中や白い砂が波打つ海辺を歩き、花畑で踊っていると想像しながら歌っておくれ」
子どもたちが兵隊の人形に名前をつけて歌を歌うと、イベドルは子どもたちの歌声に生命の命を吹き込んだ。生まれ変わった人形は兵器となって、歌っている子どもたちが閉じ込められている無念の沼を壊し始めた。ベルシュアンとヘッサ・モアは兵器を退けたが、ここで初めてハドゥムの存在を知ることになった。以後、彼らは恐れ、神木クトゥランに千日間祈り、クザカが誕生した。
そして、その日以来、オルゼカにはまた別の知識が誕生した。ほんの束の間だが、影の目を避けることができる方法だ。この知識は、最後まで無念の沼に隠れていた、ある古代兵器が持ち出したが、後日ゴブリンのデヌーラがその知識を取り返し、苦悩が眠る墓へ戻したという。 |
▲ 苦悩が眠る墓に閉じ込められたラフィー・レッドマウンテン
冒険者は無念の沼に入る前に、墓守デヌーラから「オドラの聖なる欠片」を受け取った。それは無念の沼にいる強力な深淵の堕落者たちの目を避け、気づかれずに通れるようにしてくれる代物だった。これは墓守デヌーラがかつてアヒブに探してやった「失われた知識」でもあった。
オドラの聖なる欠片を受け取った冒険者は、温かい光が体を包み込んでいくのを感じた。しかし、この力はしばらくの間しか効力がなかったため、無念の沼の深部へ急がなければならなかった。冒険者は無念の沼を駆け抜けながら、すぐ横を深淵の堕落者たちが真っ赤な目で歩き回っていることに身震いした。しかし欠片の力か、彼らが冒険者の存在に気づくことはなかった。
安心した冒険者はいばらの監獄の奥深くに入り、イベドルの抜け殻を取り出した。すると、監獄の片隅に黒い亀裂が発生し、最初の堕落者ラズナールが姿を現した。ハドゥムのオーラを感じ、堕落した神の念を成し遂げるためだった。
ラズナールは見た目は普通のアヒブだった。しかし、彼女から噴き出すオーラは以前に冒険者が感じた悪神クザカと同じものだった。尋常でない殺意を感じた冒険者は、武器を力強く握りしめた。これまでになく激しい戦闘を予想した瞬間だった。
やがてラズナールが巨大な力で衝撃波を起こし、思わず冒険者は倒れ込んだ。彼女は冒険者が持ってきたイベドルの抜け殻に身を震わせながら冒険者を無慈悲に攻撃し、冒険者もまた自分の持つ闇の精霊の全ての力を引き出して立ち向かった。そんな激しい接戦の末、冒険者の武器がラズナールを貫き、冒険者は九死に一生を得た。
▲ オドラの聖なる欠片の力で無事に無念の沼を切り抜けた冒険者
▲ 燃やす者、ラズナールと激しい戦闘を繰り広げる冒険者
辛うじて危機を乗り越えた冒険者は、荒く息を吐きながら倒れたラズナールの後ろに姿を現した彫刻像を発見した。大きな杯の形をしたその彫刻像は、かつてオルゼカの王、ベルシュアンを補佐した魔女ヘッサ・モアの墓でもあった。また、その杯の上には石で作られた本があり、「隠された真実の戒律」が刻まれていたが、その内容は以下の通りだった。
隠された真実の戒律
この世界の影によって命が宿った黄銅と青銅の古代兵器をオーディリタの地から追い出したあの日以降の、ベルシュアンの魔女の物語が記されている。
…女神よ、影の蛇に騙され神聖な沼に災いをもたらした子どもたちの歯を、この無念の杯に入れて参りました。何卒、その怒りをお鎮めください。
魔女が杯を揺らすと、カチャカチャという音だけが無念の沼に静かに響いた。
子どもたちに転生の祝福を与えないでください。前世の記憶は失っても、感情は記憶したまま、生まれ変っても永遠にこの冷たい洞窟で過ごした恐怖を忘れさせず、苦しませてください。
隠された真実の戒律の裏側
黄色い花、空花、赤い花が海を成し、鳥たちの歌の中で踊っている夢を見ている。見たことも聞いたこともないが、そんな夢を見ると、全身が痒くなる。この歌が終われば、あなたは翼を広げて、自由に空を飛び回る妖精として生まれ、暁の露に浸かり、動物たちと実を分け合って食べるだろう。
ガイピンラーシア、この歌を共に歌おう。目を閉じて一緒に歌えば怖くない。私たちが小さくて美しい妖精として生まれ変わるまで、ガイピンラーシア、この歌を共に歌おう。全ての地に祝福を与える妖精となれる、その日を待とう。だが、この乾いた大地には、祝福なんて与えない。 |
無念の杯を手にした冒険者は、再びいばらの書斎へ戻った。黒い瞳は戻ってきた冒険者を見て「まるで絶対者の選択を受けた者」のようだと、ラフィー・レッドマウンテンの処分を冒険者に任せた。一つの選択肢はラフィーに足枷を嵌めたあと、ここ苦悩が眠る墓でオルゼカの秘密を突き止めさせること、もう一つは首都オドラクシアに送って女王を補佐させることだった。
いずれにせよラフィーに自由を与えることはできなかったが、冒険者はまだマシだと思われる後者を選んだ。再び足枷を嵌めて書斎の奴隷にするのは、あまりにも残酷だったからだ。冒険者はそうしてでも、冒険者は秘密守護団との義理を守りたかった。
▲ 冒険者は、ラフィー・レッドマウンテンの今後について選択することになった。
しかし、ラフィーは怒ってエダンのところに返してくれと叫んだ。そして「アヒブに騙されるな。彼らがオルゼカの神話を背景にして、どう歴史を歪曲しているのか知るべきだ」と言った。しかし、黒い瞳は頑なだった。
「ジョシュア・オウダー様の古書には、トゥースフェアリーとガイピンの軍隊が結んだ契約を疑う内容がありました。母(シルビア)はカーマスリブに力を吹き込んで私たちを守ろうとしましたが、女神の力を恐れた妖精たちがカーマスリブに多くの力を与えるようにそそのかしました。そうして妖精に騙されて力を奪われた母は視力を失い、いばらの洞窟に捨てられたのです」
黒い瞳は、込み上げる感情を抑えるかのように大きく息を吸い込んだ。
「母の血が流れたいばらの洞窟がすぐに新しい神木となり、長きに渡り我々を待っていた間、あなたの先祖である野蛮人たちが母の知識を奪い、巨大な図書館を建てたにも関わらず、その貪欲さによって滅亡しました。しかし、遂に我々アヒブが完全なる王冠、そしてカーマスリブの枝を神木に戻したことで、母は栄光を取り戻したのです。
このハドゥムとの戦争を終える日、女神を陥れた妖精、妖精に騙され手先となったガネルたちには、母の怒りに見合った審判が下されるでしょう。天馬に乗って天に帰ったというカーマスリビアに伝わる歴史と違い、母は神の力を恐れた妖精たちによってここに追い立てられました。そしてそんな妖精たちを誕生させたのは、古のオルゼカの野蛮人、すなわち…あなた方です…」
「あり得ない!こうした解釈が今後どれだけの混乱をもたらすことか!」
黒い瞳はラフィーの逆上を物ともせず、冒険者に監視者の親書を渡すと「これをラ・オデル近くにいるシリー・チェルアに渡すように」と言った。不均衡な宝石を作る3番目の材料であるツンタの種は、その知識を解釈したことで認められシリー・チェルアを支援することになった野蛮人「オルガリシ」が知っていたからだ。
▲ 冒険者は黒い瞳の親書を受け取り、シリー・チェルアへ届ける。
ラ・オデル
アイネルをめぐる秘密
ラ・オデル拠点は、名目上ナクシオンを管理する陣地だったが、一方では最近いばらの森を奪還したセペル勢力を牽制し、ツンクタに降り注ぐ怪しいオーラを監視する役割を果たしていた。そこの精鋭団長シリー・チェルアは、冒険者が持ってきた監視者の親書にさらっと目を通すと、鍛冶屋オルガリシのもとへと案内した。
「二つ目の材料まで手に入れたということは、ラフィーを苦悩が眠る墓に閉じ込めたという意味だろう」
オルガリシは冒険者に向かって火縄銃を一つ投げた。この銃なら、トゥーロ族に認められるため「野生の息吹」を救うことができるということだった。不均衡な宝石を作る三つ目の材料であるツンタの種は、現在セペル側に立っているトゥーロ族の族長が持っているため、冒険者はこの族長に対抗する者たちが必要とする野生の息吹で彼らを丸め込まなければならなかった。野生の息吹だけが対抗者たちを取り巻く「ツンタの刑罰」を軽減することができたからだ。
ツンタとツンクタ
ツンタは、オーディリタの土着種族であるトゥーロ族が仕える大地の神だ。ツンクタという地名は、ツンタの種で育った森という意味を持っている。ハドゥムから守ってくれる力を持った「藍色の炎」も彼らが仕える大地の神、ツンタが作ったものだ。そのおかげで生命の海のようなこの森は、かつてのハドゥムの蛇の脅威から逃れることができた。 |
▲ ツンタの種について詳しいドワーフのオルガリシ
冒険者はオルガリシから受け取った火縄銃を持ち、ナクシオンで新緑の雄雌のシカ、草サイを捕まえて野生の息吹を採取した。そして、これをヴェルティの交渉人シルカーに持って行くと助言を求めた。彼女は以前からトゥーロ族を女王の味方にしたいと考えていたが、トゥーロ族の族長が「ツンタの啓示」に従わなければならないとして、自身の居場所をセペルの拠点であるいばらの城に移そうとしたため、かなりの困難に直面していた。
シルカーは冒険者が持ってきた野生の息吹で苦しむトゥーロ族を治療する「ナクシオンの妙薬」を作った。冒険者はこれを部族長カルテール・タンクタに渡せばよかった。カルテール・タンクタは族長が受けたという啓示とは違い、どんな瞬間が来てもツンクタを離れてはならないという「ツンタの使命」に従う対抗者だった。
一方シルカーは、冒険者からトゥーロ族の族長が受けたという「ツンタの啓示」そのものが疑わしいという話を切り出した。なんと千年もの間、ツンクタを取り囲み守ってきた藍色の炎が消えたのを見たとき、セペルが何やら浅はかな手を使ったようだったからだ。
▲ ナクシオンの野生動物を捕まえて野生の息吹を採取する冒険者
さらにシルカーは、オーディリタで堕落者を増やしている犯人がセペルかラ・オデルだろうと推測していた。特にラ・オデルという地名は「ラ・オデル・アイネル」、すなわちアーチェル捕虜の名前と一致していた。参考までに、アイネルはかつてベディル(アヒブ)がオーディリタに逃亡した際、カーマスリビアの先代女王アメリアが送った精鋭部隊だ。
しかし、かつてオーディリタに入り込んだアイネルは結局、断罪する祭壇で全員処刑され、ラ・オデルだけが生き残った。アヒブが彼女を助けた理由は何もなかった。彼女はオーディリタの地名と同じ名前だったこともあり、単純に遊ぶおもちゃが必要だったこともあった。アヒブに捕まったラ・オデルは女王アメリアが下した指令を自白したが、それはブロリナ・オーネットを暗殺し、キャサリン・オーネット姫の死体を探し、ズタズタに引き裂いて野犬の餌にしろという内容だった。
この話を聞いた瞬間、冒険者は改めておかしいと思った。敵国の人質となった王女(ブロリナ)を助けるのではなく、暗殺するように指示をした?そして、カーマスリブを燃やしたベディルを誰よりも憎んでいたアメリア女王が、むしろカーマスリブの光を取り戻そうとしたキャサリン姫の死体を探してズタズタにしろと…?
「キャサリン姫が亡くなって国葬を行なったのですが、姫の遺体を見た者は誰もいないという怪しい噂があります…」
冒険者は、カーマスリビアで出会った話すフクロウ、オビー・ベレンの言葉を思い出した。まさか、キャサリンが死んだというのは嘘だったのか?だとすると、暴君アメリアは、皆を騙したのか?一体どうして?何の目的でそんな芝居をしたのだろうか?
▲ 千年間ツンクタを守っていた藍色の炎が消えた。誰の仕業だろうか。
▲ カーマスリビアの隠された歴史が、今再び暴かれようとしている。
混乱に陥った冒険者は、ナクシオンの妙薬をトゥーロ族の族長に渡す前に、まずかつてアメリア女王の精鋭部隊だったラ・オデル・アイネルに会うことにした。
「あなたが……ラ・オデル・アイネル?」
「太陽と月が共存しなければならないとは?本当の月の親和性がなければ、カーマスリブとこの地を守る承継者にはなれないのですか?どうして敢えて陛下にそんなことを!」
冒険者が会ったラ・オデル・アイネルの姿は、思ったよりみすぼらしかった。彼女はおかしくなった人のようにわけの分からない独り言をつぶやいていたが、服は継ぎ接ぎだらけで、その手は泥だらけだった。だが不思議なことに、彼女の表情は誰よりも平穏で、まるで修道士のようだった。冒険者はそんな彼女に近づき、慎重に言葉をかけた。
「ここに来た目的は何ですか?」
「黎明の光を消せ!二度と王座を狙うことができないように両足首を切り、舌をねじって言葉も喋れないようにしろ!イアナロスの審判を目撃した唯一の者を処断した者に、永遠の栄光があるだろう!」
「今は…何をしているのですか?」
「母の神木、カーマスリブに祈りを捧げています。母は、太陽と月の均衡を崩してこそ、その隙間から戻ってくることができると言いました。一方だけ崩せば…その次は…自然と崩れるでしょう…。アイネルがまず太陽を崩し、母の審判とともに月を崩せば…その隙間から戻ってきた母が、この世に黒い太陽を再び浮かび上がらせるでしょう…」
▲ おかしくなったラ・オデル・アイネル
明らかに彼女はおかしくなっていた。なんの変哲もない木に向かって祈りを捧げ、カーマスリブだと言うなんて。しかし、彼女が最後に放った言葉は衝撃的だった。黒い太陽。それは、ハドゥムの象徴ではないか。もしラ・オデルの言葉が事実なら、これまでのカーマスリブの歴史は覆されるだろう。
しかし、このおかしくなった彼女の話を鵜呑みにするわけにもいかなかった。そこでまず冒険者は、正確な事実を確認するためにナクシオンの妙薬を持って「オドラの巫女、ヤヌナ」のもとへ向かった。トゥーロ族対抗者たちの面倒を見ていたヤヌナは、冒険者が持ってきた妙薬を見てとても喜び、感謝の言葉を述べた。トゥーロ族は遺伝的に族長の命に逆らうと恐ろしい苦痛に悩まされるが、この妙薬はその苦痛を和らげてくれる力を持っていたからだ。
トゥーロ族対抗者たちは、ナクシオンの妙薬を持ってきた冒険者を説得した。彼らは現在、族長がセペルをトゥーロ族の希望と考えていると言い、汚染された啓示の中毒になったに違いないと話した。これから冒険者のすべきことは、トゥーロ族の対抗者たちを助けてツンタの種を入手し、アイネルとアメリア、いや、カーマスリビアとオーディリタ全体をめぐる秘密を暴くことだった。
▲苦しむトゥーロ族対抗者を治療するヤヌナ
前回までの内容はこちら
▶黒い砂漠ストーリー #7 - オージェの切ない恋の物語、カルフェオン分岐2編へ
▶黒い砂漠ストーリー #8 - 誰も信じられない権力の都市、カルフェオン分岐3編へ
▶黒い砂漠ストーリー #9 - 明かされる古代神とエリアン教の秘密、カルフェオン最終編
▶黒い砂漠ストーリー #10 - シラレの不吉な予言と疑念、メディアプロローグ編
▶黒い砂漠ストーリー #11 - イレズラの闇の痕跡を追って、メディア分岐 1編へ
▶黒い砂漠ストーリー #12 - 隠されたネルダ・シェンの内情、メディア分岐 2編へ
▶黒い砂漠ストーリー #13 - 冒険者の正体は闇の力の器?へ
▶黒い砂漠ストーリー #14 - 蛾は結局、明かりの方へ。避けられない運命に呼び寄せられ。へ
▶黒い砂漠ストーリー #15 - バレンシア建国の秘密、その中には冒険者がいたへ
▶黒い砂漠ストーリー #16 - 血と復讐のカーマスリビア、美しい顔の裏へ
▶黒い砂漠ストーリー #17 - キャサリン・オーネット、彼女は本当に美しい姫だったへ
▶黒い砂漠ストーリー #18 - ドベンクルンに影を落とす赤い影、ガーモスの登場へ
▶黒い砂漠ストーリー #19 - おさまった火種、しかし脅威は存在するへ
▶黒い砂漠ストーリー #20 - 事実、人間こそが最も恐ろしい生き物だ(星の墓場)へ
▶黒い砂漠ストーリー #21 - 輝くカーマスリブ、迫り来る闇(オーディリタ 1編)へ
▶黒い砂漠ストーリー #22 - グランディーハ神託の決定(オーディリタ 2編)
▶黒い砂漠ストーリー #23 - 全ては最初から計画されていたへ
▶黒い砂漠ストーリー #24 - 最期を見届けてくれて、ありがとう。へ