黒い砂漠ストーリーガイド - 一気に読む総まとめ
ユ・ジェウ記者(Giirin@inven.co.kr)
上編でカーマスリビアの調査を終えた冒険者は、カルフェオンの親書を持って再びカーマスリビアへと向かいます。カルフェオンはカーマスリビアとの協定により経済的な利益を手にする一方、余力があれば兵士を動員し占領しようと目論んでいました。
ところが、レモリア警備警戒所から予期せぬ旅に出ることになったカルフェオンの使節団である冒険者は、カーマスリブの光を取り戻す方法があるという事実を知り、「秘密守護団」オーウェンと絡んだ複雑な事件に直面することになります。
カーマスリビアのメインストーリーはリニューアルされたばかりのため、ストーリーの仕上がりと没入感が高いと言えるパートです。そのため多少ボリュームがありますが、詳しく見ていきたいと思います。今回でカーマスリビアのストーリーは終了し、次回からはドリガンへと続く予定です。
※ 本ストーリー記事はシリーズで連載されます。
※ メインクエスト、NPCの会話、知識などを参照して作成しました。
※ 分岐とは、ゲーム内でユーザーが何を選択するかによってエピソードが変わる部分を指します。
※ 若干の脚色が含まれていますが、ゲーム内の設定およびコンセプトには支障ありません。
■ カーマスリビア下編 - 取り戻したカーマスリブの光
トレント村、レモリア警備警戒所
カルフェオン議会の親書を渡すために
木材所が発達しているトレント村では、幾重にも積み上げられたスギの木材をあちこちで見ることができた。冒険者はその中からちょうどよさそうな場所を見つけて腰かけると、久しぶりに余裕を味わっていた。冒険者のすぐ隣には、村の労働者と思われる人々が集まり何やら話し込んでいるようだった。
デルパードからもらったビールを取り出して口をつけようとしていた冒険者の手が止まったのは、そのときだった。耳に入ってきた労働者たちの会話が、何やら穏やかではなかったためだ。「10年前に山脈の向こうから背の高い女たちがやってきただろう?」飛び交っていたのは、そんな話だった。冒険者は「背の高い女」と聞いて、シルビアの娘たちを思い出した。10年前に何が起きたというのだろうか?
▲ 冒険者は休憩中、偶然にも労働者たちの会話を耳にした。
冒険者は冷たいビールを持って、労働者たちに近づいていった。気のいい労働者たちは気さくに声をかけてきた冒険者を快く受け入れ、すぐに打ち解けると会話は盛り上がりを見せた。
労働者たちによると、約10年前にバルタラ山脈の向こうからスラリと背の高い女たちがやってきたという。自らを光明のルーツと称した彼女たちは、ライオンの胴体に鷲の頭を持った怪物(グリフォン)を連れて静かにカルフェオン寺院へ入ると「トロルとサウニール」について語り始めた。ところが彼女たちが帰っていくらも経たず、本当にカルフェオンでトロルとサウニールが猛威を振るい始めた。
この話を聞いた冒険者の表情が一瞬にしてこわばった。もしかすると、カルフェオンで起こったトロルとサウニールの戦争は、何者かに計画されたものだったのだろうか?現女王ブロリナ・オーネットが政権を握ることになったのも、実はこの戦争が決定的な要素だった。この戦争がなければアメリアの精鋭護衛隊「アイネル」がカルフェオンに遠征することもなかっただろうし、ブロリナがほとんどがらんどうだったカーマスリビアを占有することもなかったはずだ。
もしこの憶測が事実なら、ブロリナは「悪辣なカラス」に違いなかった。わざと混乱を生み、その間に女王の座に就いたのだ。それならカーマスリビアとカルフェオンの同盟の裏には、一体どんな魂胆が隠されているのだろうか?ブロリナにはカーマスリビアを占有しようとする明確な目的があるとしよう。では、カルフェオンは?なぜ自ら地を荒らしたのだろうか?冒険者は急に頭がクラクラしてきた。しかしこれらはすべて推測に過ぎず、労働者たちの話を聞いただけで決めつけることはできなかった。
▲ カルフェオンの混乱と黎明の帰国。もしかすると、これは単なる偶然ではないのかもしれない。
冒険者が考え込んでいると、いつのまにかカルフェオン議会からカーマスリビアの女王に送る親書が完成していた。デルパードは女王に親書を渡すと同時に、カルフェオンの兵士が移動する通路と敵が待ち伏せしていそうな場所を調査するように要請した。また、エンカロシャーはまもなく始まろうとしているカーマスリビアとの交易のために進入路のガーゴイルを討伐するようにと言った。
冒険者はガーゴイルを討伐し、すぐに厳しい警戒態勢が敷かれているレモリア警備所に到着した。カルフェオンの正式使節である冒険者は無事に検問を通過し、警備隊長ナルシランに会うことができた。ナルシランは冒険者に警戒所を案内しながら「どうせならビブ・フォレタのイチゴの山荘に寄ってみてはどうか」と提案した。ちょうど今は、爽やかで美味しいイチゴを味わえる季節だったからだ。
ナルシランはイチゴの山荘に行けば、かつてグラナの司祭だったノルン・フェザーラスに会えるかもしれないと言った。彼はかつて王女たちが聞いた古代の精霊の言葉を記録し、解釈する仕事を担当していた。ベディルの抹殺に目がくらんだアメリア女王によって追い出される前までは。
▲ トレント村で会議をしているカルフェオンの代表たち。一番右はサウニールとの戦争で活躍したフリードリヒ・タウパリクソン。
▲ 進入路のガーゴイルを討伐する冒険者
▲ カーマスリビアの国境を渡るにはレモリア警備所の検問を通過しなければならない。
ビブ・フォレタ山荘、アタニス池、ナクの洞窟
カーマスリブの光を取り戻す糸口を掴む
冒険者はアタニス小川を越えてバルタラ山脈にあるビブ・フォレタ山荘に到着した。山荘の貿易管理人ノールンは、ナルシランが自分を直接紹介したと聞くと恥ずかしがった。彼はかつて享受した名誉と権力など、とうの昔に捨てていたのだ。前女王アメリアの暴政により解体されたカーマスリブ司祭団、そこから無事に生還できただけでも彼にとっては奇跡だった。
だが冒険者が興味を示すと浮かれたノールンは、自らの武勇伝を語り始めた。現在のブロリナ体制ではあるルトラゴン長老がかつてのノールンの役割を担っていたが、その長老は何かしらの理由で記憶を失っていた。しかし、古代の精霊の言葉については精通しているらしい。
そして彼によると、カーマスリブの光を取り戻す方法は皆無ではないという。豊穣の精霊アタニスがガネルの末の王女キャサリン・オーネットにその方法を伝授したからだった。カーマスリブの光を取り戻すには、バルタラ、オギエール、ナク精霊の力が必要だった。ところが問題は、ナク精霊がアメリアの狂気によってアヒブと共に森を離れたこと、そしてキャサリンがこれによりアヒブの怒りを買い、日誌が封印されてしまったことだった。
▲ かつてカーマスリブ司祭団に所属していたノルン・フェザーラス
そこでノールンは、アタニス池のエルピアンソを紹介してくれた。アタニス池付近に到着した冒険者は、どこからともなく聞こえてくる美しい旋律に身を任せた。エルピアンソの暖かい声は冒険者の心を溶かしていった。彼女が歌っていたのは、豊穣の精霊アタニスの最後の旋律だった。彼女はカーマスリブの光のため犠牲になったその精霊を称えていたのだった。
エルピアンソは、冒険者を待っている客が一人いると言った。突然のことに冒険者は戸惑ったが、驚くことに冒険者を待っていたのは他ならぬオーウェンだった。オーウェンによると、カルフェオンの裏通りでカーマスリビア産の密輸品が取引されているの目撃したとき、彼らの口から冒険者の名前を聞いたのだという。おそらく誰かがカルフェオン使節団が持ってきた品のうち、いくつかを盗み出したのだろう。
大自然の懐に入った豊穣の精霊、アタニスの最期の旋律 毎晩、月が明るく輝く静かな丘に出て、精霊の巣の中に入り、その懐に抱かれなさい。森の道に沿って進み、木の枝を友にして、険しい旅路のその果てに、精霊の巣の中に、その中で眠りなさい。私はここにいる。カーマスリブの温もりが、君のすぐ傍で抱きしめて、精霊の巣の中にいられるようにしてあげよう。 |
▲ アタニス精霊の旋律を歌うエルピアンソ
しかし、オーウェンが伝えたかったのはそれではなかった。物想いにふけったような目でアタニス池を見つめていた彼女は、かつて自身がカーマスリビアで経験した出来事について語り始めた。カーマスリビアはオーウェンが一度も会ったことがない父の土地で、尖った耳を除いて普通の人間と違う姿をしていたオーウェンは、ガネルたちからのけ者にされていた。あからさまではなかったが、オーウェンは陰口を言われていることに気づいていたのだ。
そんな彼女を唯一受け入れてくれたのが、キャサリン・オーネット姫だった。冒険好きだった姫は、いつもオーウェンに根の世界の話やアタニス精霊の話を聞かせてくれた。アタニスはキャサリン・オーネットにこんな話をしたことがあるという。「ナクは決して、我々を見捨てたのではない。ナクを恨んではいけない」と。
しかしある日、キャサリン姫はオーウェンをカーマスリビアから追い出してしまった。その理由はオーウェンにも分からなかった。オーウェンは自身を外へ連れ出そうとするヘラウェンに泣きついたが、無駄だった。その後、カーマスリビアの国境は封鎖され、彼女はしばらく故郷に帰ることができなかった。
▲ アタニス池で冒険者を待っているオーウェン
今回のカーマスリビアの門戸開放により故郷に戻ることができたオーウェンは、カドゥイルの森の密猟者ジェーリモから古代の遺物についての情報を探ろうとした。これは単純に彼女が「秘密守護団」であるからかもしれないが、おそらくキャサリンへの想いが彼女をそうさせているのかもしれなかった。
これを聞いた冒険者もまた、ジェーリモに会ってみなければと思った。カーマスリブの光を取り戻すために必要とされている三人の古代精霊(バルタラ、オギエール、ナク)の歌。イチゴの山荘ノールンに聞いた話ではナクはアヒブと共に森を出たそうだが、オーウェンがキャサリンから聞いた話はそれとは違っていた。ナクがカーマスリビアを捨てたのではないなら、希望は残されている。
だが、カドゥイルの森の密猟者ジェーリモが簡単に口を割るはずはなかった。不法な取引や密猟をしながら生きてきた彼は、まず冒険者に「人手」を提供するよう要求した。ジェーリモはすぐに「生きたまま捕らえた」ビックホーンリザードが必要だと言った。そこで冒険者はジェーリモに言われた通り、近くにいるフリーエラからネズミを盗み出すとビックホーンリザードをおびき寄せて捕まえた。バレンシアの大泥棒にとって、これ位のことは朝飯前だった。
▲ 金の匂いと血の匂いが漂う密猟者ジェーリモ
▲ 我こそがバレンシアで腕に覚えのある大泥棒だ。
▲ 丸々と太ったビックホーンリザード
目当てのビックホーンリザードを手に入れたジェーリモは、約束通り情報を渡してくれた。現在、ガネルから寝返ったマンシャウムたちがグリフォンをむやみに狩猟してナクの洞窟に運んでいるという。その理由は、アヒブズグリフォンを誕生させるためだった。ナク精霊に仕えるマンシャウムたちは、アヒブ側に回ったのだった。
ナクの洞窟に侵入するには、濃い血の匂い、つまり生贄が必要だった。この話を聞いた闇の精霊は、マンシャウム戦士たちを殺して生贄に捧げようと言った。そうすればガネルとも親しくなれるし、洞窟にも入れるので一石二鳥だというのだ。
冒険者はマンシャウムの森道に侵入し、マンシャウム戦士たちを手あたり次第狩っていった。すでに冒険者の体はマンシャウムの血だらけだったが、その姿を見た闇の精霊は満足気な表情を浮かべた。
▲ ナク精霊に仕えているマンシャウム族
ナクの洞窟内にはジェーリモが言っていた通り、グリフォンの死体が転がっていた。そしてその周辺には死んだ母親を貪り食う数匹の子どもの姿が見えた。おそらく「アヒブズグリフォン」というのは、自分の母親を食べて育ったグリフォンのことを指すのだろう。そのためか、彼らの目つきは普通のグリフォンとは違い、鋭く険しかった。
一方グリフォンの死体の後ろには、所々に謎の文字が刻まれたトーテムが一つ立っていた。冒険者がその不思議な形をした巨大なマンシャウムトーテムに刻まれた文字を読み解くための手がかりを探していたときだった。死んだグリフォンの爪からきらめく何かを発見した。それは小さな球の欠片だった。冒険者がその欠片を手に握ると、不思議と強力なオーラが感じられた。その球は確かに冒険者をどこかへ導いているようだった。
▲ 死んだ母親を貪り食うアヒブズグリフォンの子ども
▲ 巨大なマンシャウムトーテム
その球に導かれていくと、洞窟の南にある丘にたどり着いた。すると冒険者が持っていた球が揺れ始め、とてつもない力が溢れ出したかと思うと、マンシャウム族長のナク・ブリュッシカが姿を現した。なんとその球は、族長ブリュッシカのものだったのだ。ブリュッシカは冒険者の3倍はあるかと思われる槍を振り回して冒険者を威嚇した。突然の出来事に冒険者は一瞬ひるんだものの、今まで磨いてきた実力でなんとかブリュッシカを倒すことに成功した。
ブリュッシカを倒した冒険者は、何かを「解決したような」気分になった。以前に比べ、ずっと賢くなったような気がした。(精霊の言葉を読めるようになった。)闇の精霊も何かに気づいたのか、急いでナクの洞窟に戻ろうと言った。ナクの洞窟にあるマンシャウムトーテムの呪縛が解除されたのだ。冒険者はそこで、何者かの綺麗な筆跡が残された一つの石板を見つけた。
ナク精霊の話が記された石板 ダークナイトさえもこの森から立ち去った夜、女神が降臨してむせび泣きながらこう言った。「この森に残った祝福をすべて持ち去っても構わないから 私の愛する娘たちを捨てないでおくれ。まだこの森に残っている月の子どもたちの面倒を見ておくれ。もし子どもたちが去ったなら、傍で守ってやっておくれ。乾いた大地ではなく、乾いた心を濡らしておくれ」大雨を降らせて一緒に涙を流すから、母よ、安心してお休みください。 |
実は、ナクはガネルを裏切ったのではなく、女神シルビアの願いを聞いただけだった。女神はこの森を諦めながらも、娘たちを守ろうとしていたのだ。アヒブたちは乾いた大地に雨を降らせるためナク神を敬拝し、ナクは女神の望み通りに彼らに雨を降らせた。
ところが、アヒブはナク神の雨で育ったつるから魔力を引き出した。そしてカーマスリビアを攻撃する計画を立てた。そのため、現在ナクは乾いた大地に逃げたアヒブの烙印のような存在となった。
▲ マンシャウム族長、ナク・ブリュッシカ
ナク精霊の実態を知った闇の精霊は、再び冒険者にせがんだ。他にも何かないか、ジェーリモのところに戻ろうというのだ。ジェーリモは戻って来た冒険者を見て気に入ったというようにニヤリと笑った。ナクの洞窟から生きて帰ってきたということは、一緒に働く資格が十分にあると判断したためだ。
ジェーリモは自分をガネルに渡さずときどき助けるという条件で、また別の情報を与えてくれた。彼によると知恵の古木という巨大な木があり、そこはアヒブとしばしば衝突しているガネルの軍事基地だという(レモリア遠征隊の基盤)。ところがそこでもっとも不思議なのは「しゃべるフクロウ」だった。ジェーリモはいつかそのフクロウが消えたら、その時は自分が狩ったのだと思え、といいながら舌なめずりをした。
知恵の古木、ナバン草原
第一の鍵、バルタラの歌
冒険者はジェーリモの奇妙な趣向に舌を巻きながら、知恵の古木へと向かった。高くそびえ立つ木の下にはレンジャーたちの姿が見えたが、入り口にはひときわ目を引く真っ白なフクロウの姿があった。
実は、しゃべるフクロウ「オビー・ベレン」は、冒険者がカルフェオンの使節だということも、レモリアからの親書を持ってきたことも知っていた。彼は冒険者が手にしている謎の石板に興味を持ったようだった。
石板を読んでいたオビー・ベレンは、それがナク精霊の物語であること、そしてその筆跡がキャサリン姫のものに間違いないと確信した。オビー・ベレンによると、キャサリンは生前とても優しくか弱い姫だったという。もしかするとナクとアタニスが彼女を選んだのも、彼女が誰よりも純粋な存在だったからかもしれなかった。彼女はかつて混乱に陥った森でカーマスリブの光を取り戻す最後の希望だったのだ。
▲ 知恵の古木のしゃべるフクロウ、オビー・ベレン
しばらく悩んでいた様子のオビー・ベレンは、知恵の古木の鍛冶屋プリトラに会ってみてはどうかと言った。プリトラはキャサリン姫が心から大切にしていた友人の一人で、現在はアヒブからカーマスリビアを守るための物資である赤い青金石を作る仕事をしていた。オビー・ベレンから話を伝え聞いたプリトラは、もしかしたら冒険者が「思いがけない希望」となるかもしれないと考えた。
「精霊の悲しみに向かい合って清い涙が流れたら、月のない暗い夜道をアタニスの灯が導くだろう」プリトラが言っていたキャサリン姫の日誌の一ページ目だった。その後、姫は年老いたペリの色褪せた羽を手に持ち、精霊たちと森の声を記録して歩いた。色とりどりの春の花が草原に咲き誇った頃、姫は大きなアメンボの池-高く盛り上がったフラミンゴの巣を作ると言った。
冒険者はその巣を探しに行かなければならなかった。席を立とうとする冒険者に向かってプリトラはこう言った。「キャサリン姫がそうだったように、これからあらゆる動きに気をつけろ」と。特に伝令オビー・ベレンが知ってしまった以上、冒険者の存在はカーマスリビア中に知れ渡っているに違いなかった。もしかすると、すでに冒険者の命を狙っている敵がいるかもしれなかった。
▲ キャサリン・オーネットの友人だったプリトラ
フラミンゴの巣を探っていた冒険者は、ついにキャサリン姫の色褪せた日誌を見つけた。日誌の間にはナバン草原に咲いていそうな名も知らぬ野花が挟まれていたが、瞬く間に粉々になり空に舞っていった。日誌の中を見ると、ナク洞窟で発見した石板と同じ筆跡で何かがぎっしりと書き込まれていた。
フラミンゴの巣 - 春の日誌の中 …雲の上にそっと上がり、下を見下ろすと、森の心臓に溜まっていた血が全部乾いた。 オギエールが乾いた大地に種を蒔くと、根の世界を忘れられなかったのか、ベラドンナ草がものすごい毒を含んで育った。「こら!私たちが共にそこを離れてかなり経ったのに!」とバルタラが怒鳴りつけたが、新たな命の誕生にすっかり興奮したナクが雨をむやみに降らせるから、ベラドンナ草で満ち溢れた草原になった。そこに棲息していたオオカミの皮が、ペリの尾とくちばしが次第に腐っていくと、バルタラは仕方なく、彼らに分厚い羽毛をつけてやった。まだ冬が来てもいないのに。
…アタニスが聞かせてくれたバルタラの物語。バルタラはもしかして馬鹿だったんじゃないかしら?誰より強くて高貴に、大きく育っても意味がない。地面だけを見つめて歩くから、遠くを見渡せないのよ。遥か彼方の雪の地にいる象の群れが襲ってくるのを見逃したのかも?もう少し待っていたら…象たちはベラドナをとても美味しく食べたはずなのに。そうすれば、狼とペリがこんなに暑がらなくても済んだのに!
アタニス、草原に降り注いだバルタラの厄介なプレゼントを片付け、彼女が大自然の懐へと戻る前に、草原の秩序を守ってきたマンシャウム族に伝えなければならない?え?ペリとオオカミたちの分厚い羽毛?え?わ…私に?私にどんな力があるというの?オ…オオカミに、た…食べられてしまいそうだけど…。…誰か、代わりにやってくれる人はいないかな?え?必ず秘密にして、私一人でやらなきゃいけないって?ハハッ…。…ところで、草原の秩序を守ってきたのがマンシャウムなら、まさか…まさか…エンロのこと?あの小さい子が、どんな力でナバンの秩序を守ったと? |
▲ フラミンゴの巣に落ちていたキャサリン姫の日誌
童話のように綴られた文章の下には、可愛らしく純粋な口調のキャサリン姫のメモが残されていた。オビー・ベレンが言っていた通り、キャサリン姫は戦争中のカーマスリビアにとって唯一の希望だったのだ。冒険者は日誌に書かれている通りにペリと草原のオオカミたちの羽毛を集めてエンロというマンシャウムを訪ねた。
エンロはキャサリンが心配していた通り、とても小さなマンシャウムだった。こんなマンシャウムが一体どうやってナバンの秩序を守っていたというのか?しかし、エンロの目にはいきなり羽毛を差し出してきた冒険者の方が奇妙に映った。今さら「バルタラが間違って草原に降らせたプレゼント」を取りにきたというのか?
しかし、エンロは冒険者が持っているキャサリンの日誌を見て目を丸くした。それは確かに姫の日誌だった。エンロはバルタラ精霊と結んだ誓いを守らなければならなかったため、冒険者にバルタラの最後の試験を課した。それはナバン草原の帝王に君臨しているグリフォンの卵の殻を持ってくることだった。(バルタラの歌を入れる器)
▲ ナバンの秩序を守るマンシャウム、エンロ
グリフォンはナバン草原で非常に強い力を誇る生物だったが、冒険者があえて直接グリフォンの相手をする必要はなかった。冒険者はこれまで積み上げてきた経験を活かして素早く卵だけ盗み出したが、一部始終を目の当たりにしたエンロはさすがに驚いた様子だった。エンロは約束通りバルタラの歌を冒険者が持ってきた卵の殻に入れてくれた。その歌の中で、冒険者の存在は「キャサリン・オーネットの遺志を継ぐ者」だった。
そしてエンロの話によると、小さくか弱いキャサリン姫もこの試験をパスしたという。初めにグリフォンの巣から直接卵を盗もうとして反対に食べられそうになったキャサリン姫は、夏までじっと待つことにした。しかし、ひときわ赤い月が出たある日の晩、グリフォンの群れのボスが縄張り争いで命を落としたとき、姫にチャンスが訪れた。ボスの死体が腐り始めると、誰もそばに近寄らなくなったのだ。
姫はその腐った臭いとウジ虫をかき分け、ようやく卵の殻を見つけ出した。生涯美しい宮殿の中で過ごしてきた姫にとっては、この上なく難しい試験だった。特に彼女にとって「死」と向き合うことは生まれて初めての経験だった。これまで様々な死を見届けてきた冒険者とは違って。
▲ グリフォンはナバン草原のモンスターで強い力を誇っている。
▲ カーマスリブの光を取り戻すための最初の鍵、バルタラの歌。
影の木の森、ガイピンラーシア寺院
二つ目の鍵、オギエールの歌
バルタラの歌を手に入れた冒険者は、二つ目の鍵を探していた。他ならぬ古代の川の妖精、オギエールだった。冒険者と闇の精霊は知恵の古木へ戻り、オギエールについて調査することにした。するとちょうどそこに聖人アンベリフが冒険者を待ち構えており、近くには見慣れた顔のオフィリアの姿もあった。
アンベリフは冒険者がナバン草原に立ち入ったという報告を受けたと言った。今や冒険者は、カーマスリビアの女王も注目する存在だったのだ。冒険者は、ナク精霊の真実を解き明かしてカーマスリブの光を取り戻すための唯一の希望でもあった。アンベリフは冒険者に対し丁重に接するしかなかった。
▲ カーマスリブ聖人、アンベリフは冒険者を歓迎し手厚くサポートしてくれた。
しかし、オフィリアの視線は毒気に満ちていた。オフィリアは冒険者を睨みつけながら勝手に森を歩き回った罪を問いただした。カルフェオンの使節が好き勝手に森を歩き回り、何かを企んでいると考えたのだ。ナク精霊もまた同様だった。虫けらのようなアヒブと戦った裏切り者に真実というものがあるはずがなかった。
オフィリアは冒険者が持ってきたカルフェオンの親書を強引に奪おうとした。それは、自分が代わりに渡すので本国に戻れということだった。これにはさすがの冒険者も困惑した。初めはあんなに親切だったのに、こうも態度が変わってしまうとは。彼女の言葉の端々には「黒いとげ」が突き刺さっているようだった。
アンベリフはオフィリアの無礼を咎めて代わりに冒険者に謝罪すると、下級者のオフィリアを帰して自ら首都グラナに案内すると言った。そしてオギエール精霊について尋ねる冒険者に対し、場所を変えて話そうというサインを送った。
▲ 突然目つきが鋭くなったオフィリア。初めて会ったときとは別人のようだ。
知恵の古木の南西にある影の木の森付近で冒険者は密かにアンベリフと落ち合った。アンベリフはオフィリアの態度を理解してほしいと言った。実は、知恵の古木はレモリア遠征隊の大きな傷が残されている場所でもあった。付近のドジャックトンネルとラモ渓谷で繰り広げられたアヒブとの戦争。そこでレモリアはなんと半数に及ぶ戦友を見送らなければならなかった。そのような情勢の中で異邦人を警戒しすぎるほど警戒することは、ある意味当然のことだった。
アンベリフはアタニスがキャサリン姫にだけ囁いた秘密をみんなが知っているのは自分のせいだと告白した。当時キャサリン姫が悪臭のする泥を被ってナバン草原をさまよい歩いていたとき、アイネルの監視網に捕まり暴君アメリアから厳しい尋問を受けた。しかしキャサリンは口をつぐみ、次第に死へと近づいていった。
これを見かねたアンベリフは、カルフェオンで手に入れた「甘草味のクッキー」で幼い姫の心を揺さぶり、その結果カーマスリブの光を取り戻す方法があるという事実がカーマスリビア中に知れ渡ったのだという。しかし、アメリア女王は変わらなかった。そしてこの事実はアヒブの耳にも入ることになった。
▲ 冒険者がアンベリフと密会した場所
当時姫を尋問したのは、他ならぬオフィリア・アイネルだった。アンベリフが席を移した理由も、まさにここにあった。彼女は冒険者に一冊の本を差し出した。オギエールの話をしていたときに作成したキャサリンの日誌だった。アンベリフは、冒険者が今ここで日誌を読み取ることができれば全力を尽くして助けてやるが、そうでなければ冒険者をグラナへ押送すると言った。いずれにせよ、無断で森を歩き回った罪は誰かが責任を負わなければならなかったためだ。
影の木の森 - 夏の日誌の中 …光さえ当たらない、より深く、より低い所に流れる、漆黒の闇の中で、きらめく二つの目を見た。 恐れに耐えて近づくと、真鍮と青銅で作られた古代兵器が、真っ暗な洞窟の中で、子どものようにうずくまり、憂鬱に歌う歌の中に聞こえる名前は、ガイピンラーシア。「異邦人の話では、寂しいものだから、私もここで静かにさせてくれ」ある古代兵器の言葉に、オギエールは静かに笑いながら、彼女を日光で導き、目を見つめて答えた。「川に映ったあなたの姿は、とても寂しそうに見えます。私と一緒にいることは、女神が森で暮らしてもよいと、許してくださったのだから、罪人のように隠れて暮らさないでくれ。私の地上に君たちの家を建てられるように、トゥースフェアリーにこっそり言っておくから…。…古代部族の、話せない事情とその痛みを、全て込められるよう、私はもっと深まっていくだろう」
…アタニスが聞かせてくれたオギエールの精霊の話。どうやら、オギエールはあまりにも無邪気だったみたい。誰よりも謙遜して優しくたって仕方がないわ。皆、彼女のような開かれた心を持っていないんだもの…!オギエールの言葉を信じたガイピンラーシアは、トゥースフェアリーに彼女の全軍隊を見せたの!その小さく繊細なトゥースフェアリーたちがその軍隊を見て、どれほど怖がったことか。
オギエールの失敗を収め…彼女が大自然の懐に戻る前にトゥースフェアリーとの交渉を担当したガイピンに伝えなければならないと…?もしかして…私は怖い古代兵器なの??アタニスはひどいわ。ガネルはガイピンとお互いに侵犯しないことにしたのに…。もしかして、手伝ってくれる人はいないかな?でもアタニスは、必ず一人でこっそりとやり遂げなければならないと言っていた…。ところで、交渉したガイピンって…?入口を守っているトリーチュアのこと?でもきっと大げさに脅してきて、私と話さないようにするはずだわ…。 |
▲ アンベリフの横に置かれたキャサリンの二番目の日記
日誌の解読を終えた冒険者は、アンベリフにその内容を伝えた。アンベリフは精霊の言葉を解読した冒険者の能力に驚きを隠せない様子だった。すると彼女は聖人の名にかけて冒険者を助けようと約束した。そして日誌の内容通り、ガイピンラーシア文明の守護者、トリーチュアがいる場所を教えてくれた。
ガイピンラーシアはカーマスリビアへの定着に成功した唯一の移住民の群れだった。そのせいで領域の侵犯に非常に敏感な代わり、かつてのオギエール精霊の善心を忘れていない種族だった。トリーチュアは冒険者に向かってトゥースフェアリーに植えつけられていた「異邦人の恐怖」を取り去ってやると言いながら二つのガイピンラーシア石を渡した。そしてその中にある恐怖を処断するようにという試験を与えた。
冒険者はトリーチュアに指定された場所へ向かい、ガイピンラーシア石を次々と発動させた。すると石が開き、トリーチュアに似たガイピンが現れた。一つはとても堅い鎧を纏っており攻撃が容易ではなく、もう一つは特殊な物質で覆われていて攻撃が全く通じなかった。しかし、一定時間攻撃を加えていると次第にガイピンたちの力が弱まっていき、冒険者はその隙を利用してガイピンたちを退治した。
▲ ガイピンラーシア寺院を守っているトリーチュア
▲ 冒険者が受け取った二種のガイピンラーシア石
トリーチュアは、かつてのキャサリン姫よりはるかに早く仕事を終えた冒険者を見て興味を示した。キャサリン姫(トリーチュアは「小さなぷよぷよ」と呼んでいた)がこの試験を受けたときは、真夏が秋になるほど長い時間がかかったためだ。
ガイピンラーシアを相手にすることができなかったキャサリン姫は、彼らに対抗する代わりに毎晩一つずつ話を聞かせてやった。初めは柱の後ろに隠れて叫びながら、ガイピンラーシアが疲れたらある程度の距離をとった場所から話し続けた。そうして彼女は一睡もせずに明け方になった頃ようやく寺院を出る、という毎日を繰り返した。
そんなある日、夜明けになってもキャサリンが寺院の外に出てこなかった。トリーチュアはキャサリンの死を確認するため彼女を探しに向かったが、そこで驚くべき光景を目撃した。なんと、キャサリンがガイピンと仲良くなったのか、一緒に眠っていたのだ。こうして彼女はオギエールの歌を手に入れることに成功した。
▲ 冒険者はガイピンラーシア石を使って異邦人の恐怖に立ち向かった。
▲ オギエールの歌
フランドール湖、ミルの木遺跡、イアナロスの野
キャサリンの最後の日誌、そして戻ってきたカーマスリブの光
オギエールの歌を手に入れた冒険者に最後に残されたのは、アヒブに従うナク精霊の歌だった。しかし、これを手に入れるためにはキャサリンの次の日誌が必要だった。そこで冒険者はカルフェオン議会の親書を渡すついでに、かつて姉妹を何よりも大事にしていたというブロリナ女王に会いに行くことにした。
デルパード・カスティリオンの親書を受け取ったブロリナ女王は首を縦に振ると護衛兵を呼んだ。そして親書を開きもせずに自身の寝室に置いておくようにと命令した。彼女にとって、親書よりもっと急がなければならないことがあったのだ。それはまさに、カーマスリブの光を取り戻すことだった。
実際のところ、アヒブとの闘いに苦戦しているのも、カルフェオンとの同盟が必要なのも、全てカーマスリブの光が失われたためだった。アヒブの木、トゥラシルはますます大きくなっているが、カーマスリブはその光と生気を失ってから久しかった。そのため、精霊の言葉を解読し、古代の精霊の歌を手に入れた冒険者の助けが何よりも必要だったのだ。
オフィリアは冒険者が実は身分を悪用してカーマスリビアの地形と軍事を偵察しているとして不快感を露わにしたが、ブロリナ女王は冒険者を信じてくれた。そこでブロリナは、カーマスリビアを自由に歩き回れるようにするという条件で、冒険者を説得した。彼女は冒険者がかつてキャサリン姫の遊び場だったフランドール湖に行くことを望んでいた。
▲ ブロリナはカルフェオンの親書を開きもしなかった。彼女の心の中にはもっと重要なことがあったのだ。
美しきフランドール湖は、静かで落ち着いた雰囲気に包まれていた。そしてキャサリンの日誌はシャイ族たちが暮らす岩の上にそっと置かれていた。ところが日誌を開いた冒険者は、以前とは違う何かを感じた。キャサリンの筆跡が、これまでの日誌とは違いどこか力なく見えたのだ。その日誌の最初の内容はこうだった。「アタニス精霊が去った」
フランドール湖 - 秋の日誌の中 アタニスが大自然の懐に旅立ち、私に言った。 私はナクの代わりにはなれない。古代精霊ではないからだ。代わりに私が大自然の懐に帰ることで…お前を抜け道に案内できるだけだ。根の世界から脱した純粋な光、純粋な魂を求めて、庭園の精霊イアナロスの野に染み込めば…二つの精霊の歌とともに、カーマスリブの光が浮かび上がることだろう。
…根の世界って何?どこに向かえばいいの?戸惑って悲しんでいる私にアタニスが再び囁いた。 この森にミルの木を見に来た異邦人がいる。その群れで一番幼い子どもの髪の毛から根の香りがする。その子どもの名前はオーウェンだ。オーウェン…私たちの精霊語で鍵という意味だ。
オーウェン…オーウェン…綺麗な名前。早くその子に会って、手伝ってほしいと頼まなくちゃ。 |
▲ 霧に包まれた静かなフランドール湖
▲ そっと置かれていたキャサリンの最後の日誌
冒険者は日誌に書かれていた通り、ミルの木遺跡に向かった。ミルの木遺跡はミルの木で作られた古代兵器が寺院を守っているためそう名づけられたという。冒険者はそこで懐かしい顔と再会した。考古学者のマルタ・キーンだ。彼女はそこで古代の遺物を調査しているところだった。
マルタ・キーンはオーウェンが幼い頃にミルの木遺跡で過ごしていたとき、キャサリン姫に会ったという事実を知っていた。放浪生活を送っていた幼い頃のオーウェンは、他人への警戒心が強い子どもだった。しかし、キャサリン姫は彼女に長年の友人かのように接した。すると、オーウェンもまたキャサリン姫に対し次第に心を開いていき、ついにはかけがえのない親友になったのだった。そんなある日、キャサリンは「空に上がる美しい門」を見せてあげると約束した。それこそがまさに、イアナロスの野だった。
時間が流れ、オーウェンとキャサリンがイアナロスの野で会おうと約束したその日、美しい初雪が降った。しかしその日、オーウェンにとって青天の霹靂のような出来事が起こった。彼女はヘラウェンに連れられ、カーマスリビアから追放されたのだ。キャサリンは突如冷たい目でオーウェンに今すぐ森から消えるようにと命じた。オーウェンが生きてきた中で最も泣いたのはこの日だった。そしてその夜、キャサリン姫はイアナロスの野で待ち伏せしていたアヒブに暗殺された。
この話には色々な疑問点が残されていた。キャサリンは自分が暗殺されると知っていて、わざとオーウェンを追放したのだろうか?それならば、なぜ暗殺されることを知っていたにも関わらず、イアナロスへ向かったのだろうか?そしてアーチェル出身の女王、アメリア・オーネットはこの事件のあと、“待っていたかのように”アヒブとの全面戦争を宣布したのだった。
▲ ミルの木遺跡。冒険者はここでマルタ・キーンに再会し、手がかりを得た。
▲ ミルの木遺跡を調査する考古学者マルタ・キーン
冒険者はマルタ・キーンが言っていたイアナロスの野へ向かうことにした。数々の疑問と事件が絡み合っている空間。カーマスリブの光を取り戻すことができる時点で、なぜキャサリン姫は死を選択したのだろうか。冒険者はこの謎を解き明かそうとバルタラ西部山脈をさまよい歩いた。
バルタラ西部山脈の頂上、天に向かう門が見える場所。それはイアナロスの野への入り口だった。話でだけ聞いていたその場所には、本当に美しい野原が広がっていた。色とりどりの花々と薄紫色の柳から香りがあふれていた。冒険者は柳の木の下にある美しい石を観察した。それはイアナロス精霊が宿っているといわれている岩だった。
▲ キャサリンがオーウェンに見せようとした天に向かう門
▲ イアナロスの野。ここはイアナロス精霊が管理していると言われているが、精霊を見た者は誰もいない。
ところがその瞬間、突然背後に人の気配を感じた。本能的に武器を持った冒険者は、あるルトラゴン長老がこちらを見ていることに気づいた。初めて目にする種族だった。彼らは別名「シルビアの息子」と呼ばれている種族で、冒険者は彼を警戒したがルトラゴンは平然とした声で話し始めた。彼は冒険者にロンの鏡を見せたがった。
ロンの鏡は、キャサリン姫の最後の日誌を抱いている鏡だった。そのルトラゴンによると、冒険者は精霊の悲願に心を染める者、二つの古代精霊の歌を取り戻した者、そして果たされざる啓示を受け継ぐ者として、この鏡と向き合う資格があった。彼はここで長い間キャサリンに下された啓示について苦悩していたと話した。
話し終えたルトラゴンが杖を振り回すと、巨大なロンの鏡が現れた。その中にはキャサリンの日誌がそっと置かれており、冒険者はその日誌を広げて読み始めた。
▲ ルトラゴン長老が召喚したロンの鏡。ここにキャサリンの最後の日誌が置かれていた。
イアナロスの野 - 冬の日誌の中 遠くにあるイリヤ島から来たという子、オーウェンは常に警戒していた。早くイアナロスの野に連れて行かなければならないのに…。でも、連れていくどころか、話をすることすら難しかった。私は、母に切に祈った。母よ、この秋が過ぎてしまう前に、初雪が降る前に、私があの子の全てになりますように。何の疑いもなく、私の手を繋いでついてきますように…。最後の鍵を許してください。
私は、彼女の心を得るために、全力をつくし、時間が経つにつれ、どんどん色んな話をするようになった。そして、ある日、オーウェンの小さな口から、妙な一言が出た。
『ブフラ…カヘリアク…』
彼女は顔も知らない父の日誌で見た一節だと言った。ああ…ああ…私たちにとって忘れられない一言。オリアナ様が言っていたあの者に間違いない。オーウェンには、カーマスリビアに襲った全ての混沌の元凶、「あの男」の血が流れているのだ。
私たちはお互いにいつも優しく、いつも真心を持って接した。いつの間にか、私は彼女の全てになり、彼女は私の全てになっていた。しかし、この子は鍵だ。根の世界から抜け出した純粋な魂。秋が深まっていく。冬が来る前に、終わらせなければ。でも、これが本当に母の意志なの?この罪のない子の魂を…カーマスリブの光のために、捧げなければならないの?血を含んで咲いたカーマスリブは、美しいの?
…すでにオーウェンが鍵だという事実は、ある口の軽い精霊によって、本人だけが知らない公然の噂になってしまった。じきにアメリアとアヒブの耳にも入るはず。ただ血を求める彼女たちは、オーウェンを消そうとするかもしれない…!ああ、母よ。あのかわいそうな子を、あの優しくて綺麗な子を…!カーマスリブの光という原理を掲げて、結局自分の欲の生贄にしようとした、私の罪をここに告白します。どうか、愚かな私を罰してください…! |
冒険者はロンの鏡から溢れ出した光に目がくらみ、もうろうとした。冒険者が意識を失いかけたそのとき、耳元に小さな女の子の声が響いた。冒険者の目の前で過去の場面が再生されているようだった。
結局、永遠にカーマスリビアに戻ってくるなとオーウェンを追い出した。もうカーマスリブを蘇らせることはできない。もうすぐこの美しい精霊の森も…外の世界の森のように光を失ってしまうはず…。 |
でも、もしかしたら…私が経験した試練も…とげだらけだった宮殿での暮らしの中で過ごしたオーウェンとの思い出も、大自然の懐へ戻ってしまった古代精霊たちも、光を失っていく森も、全て母の意志だったのかもしれない。慈しみ深い母が、誰かの血を欲しがるはずがないもの。 |
それは、キャサリン・オーネットの独り言だった。だがそのとき、どこからともなく足音が聞こえてきた。隠れていたアヒブが姿を現し、驚いたキャサリン・オーネットは悲鳴を上げた。なんとそこには、キャサリンの姉、ウィオレンティア・オウダーの姿があった。ウィオレンティアは気の毒そうに呟いた。「ああ…キャサリン…もうやめて…」
後ろからブロリナ・オーネットが剣を握り、慌てて走ってくる姿が見えた。しかし、すでに遅かった。ウィオレンティアの剣がキャサリンを貫いた。
「キャサリン!」
「ブロリナ?わ…私…どうしよう…?ブ…ブロリナ…助けて…」
▲ キャサリン・オーネットは姉ウィオレンティア・オウダーによって殺された。
か細く小柄な姫は、こうして最期を迎えることとなった。真冬にも関わらず真っすぐ咲き誇った花々の間から漂う生臭い臭いが鼻を衝いた。そのとき、ロンの鏡から物悲しい二重奏と共に細い一筋の光が漏れ出した。純粋な魂の光だった。いや、それはキャサリンそのものだった。
ルトラゴン長老は、その驚くべき光景を見て声を上げた。今ようやく悟ったかのように。幼い生命を傷つけないことを誓った瞬間から、キャサリン姫は鍵となったのだ。根の世界から抜け出した純粋な魂。それは精霊の母の試験であり、暗示だった。
冒険者の手にはいつの間にかキャサリンの歌が握られていた。バルタラ、オギエール精霊の歌と共にカーマスリブを蘇らせる光。冒険者はその三つのオーラが互いに絡み合って踊る光景を見た。そしてそれは次第に大きくなり、新しいエナジー、すなわちカーマスリブの光となった。
▲ キャサリンの最後の日誌を持っていたルトラゴン長老
▲ キャサリンの歌
冒険者の後ろにはいつの間にかブロリナ・オーネットが立っていた。ブロリナもその光景を見て全てを悟った。昔々その冬、イアナロスの野はすでにキャサリンの魂を収め、新たな光を咲かせていたのだ。しかし、互いへの憎悪によって争いばかりしていた姉妹たちはその事実を知らなかった。カーマスリブの光を取り戻す方法が目の前にあったにも関わらず、彼女たちの目には入らなかったのだ。
ブロリナの目から涙が溢れ出した。幾多の感情が入り交じった涙だった。今度はカーマスリブの光を取り戻す番だった。冒険者は神木カーマスリブの真ん中に立ち、光を解き放った。すると倒れていた木に生気が蘇り、光の欠片が美しく舞った。
こうしてカーマスリブは光を取り戻した。森の精霊たちが再び歌い始め、母シルビアの慈愛に満ちた声が聞こえてくるようだった。光を取り戻した冒険者は、カーマスリビアの翼として最高国賓の待遇を受けた。その代わり、カルフェオンが要請した軍事協定と交流は撤回された。まもなくカーマスリビアは力を取り戻すはずだ。異邦人の力はもう必要がなかった。
冒険者はカーマスリブが光を取り戻したという事実を隠し、トレント村のカリス議員らに報告をした。軍事代表デルパード・カスティリオンは、「協定についてはもう少し考えてみる」という想定外の回答を受け動揺した。これでカルフェオンの魂胆はなんの意味もなさなくなった。カルフェオンは絶対にこの地を占領することはできないだろう。
▲ カーマスリブの光が戻り、木は生気を取り戻した。
ヒヒッ。ところで、何かがおかしくないか?相棒、この森で年老いたガネルを見たことがあるか?それなのに…自らをシルビアの息子と名乗ったあのルトラゴン長老はどうして年老いて見えるんだ?
- 冒険者の闇の精霊
前回までの内容はこちら
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