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砂の旅人(アバールの見聞録)
アバール 2020-06-20 15:31
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旅の始まり

 船上で、何ごとかを語りかける女。「すまない。だが、わかってくれ」そう言って彼女はこちらに手を伸ばし…そしてわたしの意識は途切れた。前にも後にも、それ以外に思い出せることはない。
 ズキズキしてきた頭を振って、大きく息をつく。わたしは近くの森で倒れていたのを、ここバレノスの石室発掘現場に運ばれたのだ。エダンと名乗る旅人が、そう教えてくれた。彼は古代人が石室に遺した予言について調査しており、私の記憶がないのも、その中に示された「闇の精霊」の力にかかわるものだという。そういえば、目を覚ましてこの方、黒い靄のようなものが視界の隅から語りかけてくると思っていた…見なかったことにしていたのに。
 そのままにしておけば、この靄はわたしの心と体をむしばみ、わたしではないものに変えてしまうと、彼は宣告した。残念ながら、このままずっと見なかったことにしておく選択肢はないようだ。記憶喪失に幻覚。旅の道連れとしては最悪だが、嘆いてもしかたない。この靄の正体を解き明かさなければ、いずれ嘆くこともできなくなるのだ。幸い、理由など覚えてはいないが、知識を得ることは嫌いじゃない。ような気がする。
 この地で起こったことについて知りたければ、土地の住人にたずねるのが近道だ。エダンによれば、ここから街道を北西に進むと、西の国境に近い軍の駐屯地に辿りつけるという。国境を警備する兵士たちならば、人の出入りや異変にも明るいだろう。交易で行きかう旅人に出会えれば、遠方の心当たりも聞けるかもしれない。まずは、その地を目指すことにした。

 そのための路銀は…もしもしそこの兵隊さん、お駄賃のいただける雑用はありませんか?

2020-06-20

キャラクター名 アバール
代表キャラクター リトルサマナー
Lv 23
  • 初心者 1
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コメントつけて良いのか迷ったのだけど。

わたしが黒い砂漠を始めたころ、当時のスタート地点オルビア村で、
ひたすら話しかけてくる黒い奴。
ああ、これは話を聞いちゃいけない系のやつだと思って、
ひたすら無視し続けてたのは、今となっては良い思い出。

もし、話の続きがあるなら、このコメントは削除するよん。
2020-06-20 19:59 1
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@キャレレ わかる…どう考えても誘いに乗ったら騙される感があるわよね、アイツ。
ここはわたしの日記帳だけど、自由掲示板である以上、あなたがた皆の日記帳でもあるわ。ときどき、気が向いたときに旅の記録をつけにくるけれど、もちろん皆さんも好きに記録をつけてくれて構わない、むしろ大歓迎よ。主にこの靄の正体とか、正体とかをね!
(掲示板でやっていいことか迷ったのですが、ガイドラインを見る限り禁止事項ではなさそうでしたので、ロールプレイ日記トピックを立ててみました。話の流れなどは特に気にせず、気軽にコメントや茶々を入れていただければ幸いです)
2020-06-21 12:47 1
削除された掲示物です。
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オルビア村でスタート
闇の精霊がなにか言っているが、気にしない
それよりも山がある
山があるなら登ってみよう
当初はこんな感じで遊んでました。
2020-06-22 00:12 1
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空疎な選択肢

 隠遁の森を抜けると、そこは戦場だった。

 女将校の率いる兵団が、車輪の壊れた馬車を背にかばっている。遠くに杭で囲われた門が見える。きっと補給物資を積んで、駐屯地に戻ろうとしていたのだろう。しかし、二足歩行し、武器を構えた小柄な生き物の集団が、その行く手を阻んでいた。
「インプ」だ。エダンに聞いていた特徴に、それらはぴたりと合致していた。首領を頂点に、下は平民が支える階級社会を構成する点は、人と変わらない。しかし、人のそれよりも兵士の割合がずっと高く、小さな集団が数に見合わない脅威となりうる。自ら他の種族を攻めるのは珍しいとも聞いたが、何か癇にさわることでもしでかしたのだろうか。人の集落では見られない独自の信仰を持ち、呪い師が儀式を取りしきるという…あの、杖を持っているのが、そうか。
 人の方の兵士たちも弓と槍でさかんに応戦しているが、じわじわと後ろに追いやられているようだった。よく目をこらせば、遠くの門前にもインプらしき一団が見える。駐屯地と補給部隊を同時に襲うことで、助けを出せないように抑え込んだのか。一風変わった獣のような見かけのくせに、なるほどどうして、ずいぶん人に近い生き物のようだ。
 インプたちの姿と振る舞いを書き留めようと、手帳を取り出しかけたわたしの手は次の瞬間、絹を裂くような悲鳴に止められた。

「ちょっと、そこのあなた、黙って見てないで。助けてください。武器を持っているし、冒険者なんでしょう?ね、助けてくださいよ。せっかく買い付けた食料と矢を、あいつらに持っていかれたんです。特に、これと同じ背負い袋に貴重な薬が入っていて…私はここを守らないといけないので、代わりにそれだけでも取り返して頂けませんか?お礼はします」
 飛んできた矢をかろうじて避けた女将校が、一気にまくし立ててくる。
「あの…わたしはあの門の中にいらっしゃる、クリフ様という方にお会いするために、急いでいるのだけど…」
「なら丁度いいわ!私はフェイニア、クリフ様の副官よ。荷物を取り戻して、ついでにほんの少しの間、連中の気をそらして頂けませんか?その間に、私たちは残ったインプを片付けて、帰還路をつくります。うまくやってくれたら、クリフ様に取り次いであげる。どうせ、一人でここを抜けられるわけないんだから、協力した方があなたにも得でしょう?じゃ、門の中で会いましょう。ご武運を!」

 …つまり、わたしに、退路を確保するための囮になれということか。言い返す間もなく、フェイニアは兵士に撤退の号令をかけはじめた。彼女は、本当に進退がままならないわけではなかったのだ。部隊を守るために兵の誰を犠牲にすべきかをずっと迷っていて…そこに、いなくなっても戦力に影響しない、わたしという恰好の囮が現れたわけだ。この切り捨ての早さ、さすがは将校だ。ほめてはいない。
 くやしいことに、彼女の言葉は、正しかった。わたしの目的は、あの門の中に入ることだ。ここで尻尾を巻くくらいなら、最初に拾われた石室で、調査隊員にでもなればよかった。そして事実として、わたし一人では目の前のインプの一団も、門前で衛兵と交戦している一団も、切り抜けられはしない。
 目が覚めたときから、ずっと腰に下げていた小剣を抜いて、固く握りしめる。落ち着け、死にたくなければ動転するな。息を深く吸いこみ、吐いて、あたりを取り囲んだインプの一団を観察する。大剣を帯びた、ひときわ大柄な個体が、あたりに指図している。傍らではぼろぼろの腰布をまとった小さなインプが、服よりもだいぶ上等な布でできたずだ袋を負って、へこへこと頭を下げていた。あそこだ。

 これまで連中を観察していて、わかったことが二つある。ひとつは、あいつらは人に似て、敵を取りかこむだけの知恵が回るということ。もうひとつは、人に似て臆病だということ。正面から戦って勝ち目があるとは思えなかったが、驚かせばいいのなら、やりようはある。
「黒狼」
 記憶のある限りずっと傍らにあった、タチの悪い精霊とは違う方の影に、呼び掛ける。狼の姿をしたそれは、わたしだけに聞こえる高さで鼻を鳴らして応えた。
「あの、大きいヤツに突っ込んで、足元に噛みついて。そして、あいつが振り向いて追ってきたら、できるだけ遠くに逃げて」
 黒狼に躍りかかられた隊長らしきインプが、踵を返して森の中へ駆け込もうとする。周りのお付きたちも、慌ててそれに従った。補給部隊の馬車から盗んだであろう袋を抱えていた小柄な個体も、荷物を放り出して走り出す。わたしはそれを拾い、身をひるがえして全力で走った。
 主から離れた黒狼は、そう遠くへは行けない。お互いの姿が見えないほど離れればその場から消えて、主人の手元へと戻る。稼げる時間は長くはない。一瞬が勝負だった。一刻も早く、あの門をくぐって、そしてあの女の顔にこの袋を投げつけてやる。その一心で、ひたすら足を運んだ。

 体よく逃げのびたフェイニアと、やっとインプの群れが撤退して一息ついたらしい衛兵たちが手を振っている。
 駐屯地の入り口は、もうすぐそこだ。
2020-07-07 21:57 1
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黒い砂漠のモンスター達って、よく作りこまれていますよね。
インプに対して、これだけ細かい描写をしてもらえれば、
開発者たちも、うれしいんじゃないでしょうか。

わたしも、よく観察したいなと思うことがあります。とくに、ボス。
観察したいのに、襲ってくる。応戦しないといけない。
ジレンマだ。
2020-07-12 09:27 1
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西の駐屯地

 もし人が生涯で走れる距離に限りがあるのなら、わたしはきっとたった今、その大半を使い果たした。いちばん高価そうな戦利品を、どこからか現れた小娘にかっさらわれたのだから、インプたちの怒りっぷりは尋常じゃなかった。先ほど矢がかすめた頬の血を、左手の指で拭う。避けるのがもう半瞬遅ければ、脳天に突き立っていただろう。
「まさか本当に生きて帰ってくるなんて…あ、失礼。本当に荷物を取り返してくださるなんて、望外よ。ぜひお名前を聞かせてくださいな」
 フェイニアの声が、頭上から聞こえる。何か言い返してやりたかったが、口を開いても声にならなかった。地面が、どんどん目の前に迫ってくる。
「…いけません、早く止血しないと!あら、アバールさんとおっしゃるのね」
 意外と上背のある女将校はわたしの身体を軽々と担ぎ上げ、そして腰の組み紐の刺繍に目を止めた。
「隊のテントに運びます。クリフ様もいらっしゃるわ。取り次いであげるって、約束ですものね」

 次に目を覚ました時は、寝台の上だった。元は綺麗な金髪だったのだろうが、年を経てすっかり色の抜けた頭をした初老の男がのぞき込んでいる。使い込んだ鎧の肩には複雑な印象が刻まれていた。こんな手の込んだ家紋を思いつくのは王家くらいだろう。ずいぶん由緒ある家に仕えていたのは、間違いなさそうだ。
「近いわよ」「あっ、すまない」ばつが悪そうに後ずさりながら、男は言葉をつづけた。「君が私に会いたがっていると、副官から聞いたよ。こんな辺境の老いぼれに何の用かな?」
 まだまだこれからじゃないの、と社交儀礼を返しつつ人払いを頼み、エダンから聞かされた内容をひと通り説明する。
「些細なことでもかまわないわ。少しでも手掛かりがほしいの。ここには遠くからの旅人も、よく訪れるのでしょう?何か変わった話を聞かなかったかしら」
「あいにくだが、ここしばらくインプの襲撃が続いていてな。行商人や旅芸人の類も、すっかり足が遠のいてしまっている」
 やはりか。よくない予想が当たり、思わず顔をしかめる。
 
「知っているだろうが、インプは本来臆病な連中だ。戦える者が多く敵に回せば面倒だが、向こうから攻め込んで来るのは珍しい。」
 フェイニアがいつもの調子で喧嘩を売って怒らせた、というわけではなさそうだ。逃げる途中で、門を攻めていた一団が撤退するところとすれ違ったのを思い出し、わたしはふと、素朴な疑問を口にした。
「門の前にいたインプたち、妙に体が大きくなかったかしら?わたしが相手させられた別働隊よりたくましく見えたわ」
「いい観察眼だな。戦で身を立てる素質がありそうだ」お世辞を無視し、話の続きをうながす。
「奴らは古い祭壇の近くに住んでいる一族でな。行方不明だった連中の親玉が戻ってから急に好戦的になって、人の集落を襲ったり、君が戦ったような周りのインプの部族を従えて、縄張りを広げている。なんでも古代遺跡から発掘品を盗んできたとか聞くが…」

 どくん。後頭部が脈うつのを感じた。闇の精霊の力を帯びた遺物を持ち去ったインプは、その力に呑まれて身も心も変わり果ててしまった…エダンは、たしかにそう言っていた。
「なんにせよ、このまま人の往来を断たれてはじり貧だ。われわれは近いうちに、連中の住処に攻め込んで親玉を討つ。襲撃がおさまれば人足も戻り、君が望む情報も得られるだろう。しばらくは養生するといい」
「いいえ!」わたしは寝台から跳び起きた。「こんなの大した怪我じゃないわ。お願い、その作戦にわたしも連れていって」
2020-07-18 21:13 1
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